熱中症や風邪の時に効果的と言われている経口補水液(Oral Rehydration Solution;ORS)。
中でも有名なのが「OS-1(オーエスワン)」です。
飲む点滴とも呼ばれます。
なぜスポーツドリンクではなく、経口補水液がよいのか。
味はどうなのか、美味しいのか。
予防として飲むことに意味があるのか。
摂取量に制限はあるのか。
子供でも飲めるのか。
そもそも熱中症とはなんなのか。
コンビニでも売ってるのかなど、まとめてみました。
熱中症とは
熱中症とは、気温の高い環境で起きる健康障害の総称の事です。
段階別に名前がついています。
熱中症は身体から熱を出すために水分を出すことにより、体内の水分が足りなくなる「脱水」によるものです。
<熱失神>
体内では常に熱が作られていて、この熱を身体の外に逃がす事で体温が一定に保たれています。
しかし身体を活発に動かしたりすると、たくさんの熱が作られて体温が上がります。
体温が上がると皮膚の下を流れる血液の量が増えて、体内の熱を身体の外に逃がします。
そうすると血液が身体全体に行き渡るので、一時的に血液が足りなくなり、血圧が下がります。
血圧が下がると、脳に十分な血液が送られず酸欠状態になり、立ちくらみやめまい、また意識を失う事があります。
これが「熱失神」です。
<熱疲労>
体温が上昇すると、汗をかく事でも身体の熱を外に逃がそうとします。
汗をかいて水分を失った時に、十分な水分を摂らないと脱水状態になります。
脱水状態が続くと、倦怠感、嘔吐や頭痛などが起こります。
これが「熱疲労」です。
<熱痙攣(けいれん)>
汗は血液から作られます。
この汗が蒸発すると、身体の熱を外に逃がしてくれるので、体温を下げる事ができます。
汗はただの水分ではなく、電解質(イオン)が含まれています、
電解質の中で一番失いやすいのは、血液中に最も多いナトリウム、つまり塩分です。
発汗すると塩分の含まれた体液(血液)が減ります。
この時に水だけを飲むと、体液の濃度が下がります(薄くなります)。
塩分は筋肉の収縮を調節する役割があるので、塩分が足りないと手足がつったり、筋肉が痙攣したりします。
これが「熱痙攣」です。
<熱射病>
さらに体温があがり、体温調節機能が追い付かなくなると、脳にも影響が出ます。
すると倒れたり、意識障害を起こしたりします。
これが「熱射病」であり、とても危険な状態です。
軽い運動や寝汗などの発汗で水分を失った状態は「高張性脱水」といい、水分が足りてないということで喉が乾きます。
これに対し、大量の汗をかいたり下痢や嘔吐が続き水分と同時に大量の電解質を失った状態を「低張性脱水」といいます。
こちらの場合はすぐに経口補水液で塩分を補給することが必要です。
脱水症が危険!水ではなく経口補水液が必要な理由
大量に汗をかいた時、すなわち「低張性脱水」の場合、ただ水分を補給するだけでは全く意味がない場合があります。
なぜでしょうか。
熱中症のメカニズムでもお話した通り、私たちの身体には塩分が含まれた体液(血液)が循環しています。
体液とは水と電解質(塩分が主な成分)で構成されるものです。
発汗すると塩分の含まれた体液が減ります。
この時に水だけを飲むと、塩分が出て行っているのに水が補給されるので、体液の濃度が下がります(薄くなります)。
身体は体液の濃度を元に戻そうとするため、これ以上水を飲まないようにのどの渇きをなくします。
そして、体液の濃度を戻すため、水分を外に出します。
結果、体液の量を全く回復出来ていない事になります。
この状態が脱水症です。
脱水症が熱中症の原因になり、上記のような熱中症の様々な症状が現れます。
脱水症になると血液の量が減り、血圧が低下。
必要な栄養素が身体に回らず、不要な老廃物を回収する力も低下。
食欲不振がおこったり、電解質が失われることで足がつったり、しびれたりします。
軽い運動や普段の寝汗程度であればそこまで気にしなくても大丈夫ですが、夏場や大量の汗をかいたような時は危険です。
出ている汗がしょっぱく感じたら、塩分が出ています。
このような時には、食塩と糖質を含んだ飲料を飲むとベストです。
そこで登場するのが、「経口補水液」です。
経口補水液とは
経口補水液とは、「塩分(ナトリウム)」と「糖分」を含んだ飲料のことです。
塩分は先ほど説明した通り、体液の濃度を元に戻すために必要です。
糖分は塩分とセットになると、腸での水分吸収を促進することから重要な成分になっています。
糖分にも種類がたくさんありますが、その中でもブドウ糖と果糖を含む糖質を使用しているものが最も効果的であるという研究があるようです。
経口補水液は薬局やドラッグストアで簡単に手に入りますが、持病のある方は医師に相談してから摂取することをお勧めします。
塩分をとると血圧が上がります、糖分を含むので血糖値にも影響します。
不安な方は元気な時の検診の時に、お医者さまに確認してみてくださいね。
経口補水液は予防ではなく、お守り
経口補水液は熱中症の予防になるような気もしますが、これは間違いです。
脱水症状になっていない人、つまり体の水分と塩分のバランスが整っている人が飲むと、逆にバランスが崩れて脱水症状になる場合があります。
よって、経口補水液は予防熱中症の予防にはなりません。
上記の説明の通り、経口補水液は体内から出て行ってしまった塩分を補うものなので、塩分が多く含まれています。
これを一気に飲んでしまったり、健康な人が飲み過ぎるのは危険です。
経口補水液には1日の摂取量が決まっています。
熱中症になった際も、飲む量には気を付けましょう。
OS-1の場合、成人は500~1000mlとなっています。
こまめに飲む場合、1日15時間起きていたとして、1時間当たりは多くても60mlくらいでしょうか。
少し多めに飲む場合でも、摂取量は守りましょう。
OS-1の年齢別摂取量は以下の通りです、
・成人(学童~・高齢者を含む)
500ml~1000ml/日
・幼児(満1歳から小学校就学まで)
300ml~600ml/日
・乳児(満1歳未満)
体重1kgあたり30ml~50ml/日
余計な成分は身体に負担をかけるだけです。
用法用量はしっかり守って使ってください。
炎天下の中でスポーツをする時は、ポカリスエットやアクエリアスなどのスポーツドリンクを準備し、しっかりと水分補給をしましょう。
熱中症の症状が出てきたと思ったら、経口補水液を適量飲むようにするのがいいと思います。
予防で飲むのではなく、夏はお守りとして経口補水液を持っていると安心です。
おすすめはOS-1
経口補水液はいくつか種類がありますが、私のおすすめは所ジョージさんのCMでおなじみの「OS-1」です。
OS-1は「特別用途食品個別評価型病者用食品」として消費者庁が許可した食品です。
特別用途食品とは、乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示するもの。
また個別評価型病者用食品とは、特別用途食品のうちで特定の疾病のための食事療法上の期待できる効果の根拠が医学的、栄養学的に明らかにされている食品のことを言います。
国でしっかり認められていると、安心ですね。
OS-1にはゼリータイプもあります。
ウィダインゼリーのような形状になっていて、誤嚥(ごえん)の危険がある方でも安心して使えます。
またドリンクタイプより塩味を感じにくい為、お子様でも飲みやすいです。
さらに、飲み終わった後のゴミもかさばらず、捨てやすくなっています。
ゼリー200g(一袋)はOS-1のドリンク200mlに相当します。
ですので、成人ですと1日でゼリー5個まで摂取できます。
美味しいものではない
オーエスワンの味に関しては個人差がありますので難しいところですが、決して美味しいものではないとお伝えするのが正しいかと思います。
経口補水液は自宅で手作りもできますが、材料は「水・塩・砂糖」です。
レモン汁を加えることもありますが、あまり美味しそうではないですよね…
薬局で味を聞くと、元気で健康な時にはまずく感じるけど、身体が欲しているときは美味しく感じますよ!と言われます。
さいわい、私自身はまだオーエスワンを美味しいと感じたことはありません。
元気なときに一度飲んでみて味を確かめておくと、いざという時に自分がどれくらい弱っているかがわかりやすいかもしれませんね。
コンビニでは販売していない
経口補水液は食品扱いになるのですが、持病や年齢によって飲み方に注意が必要であるため、専門家のアドバイスが受けられる場所でのみの販売となっています。
専門家とは、医師・薬剤師・栄養士・登録販売者などを指します。
オーエスワンを販売しているところは、大塚製薬の公式サイトによると以下の場所のようです。
・ドラッグストア
・調剤薬局・薬局
・病院内の売店やコンビニ
・大塚製薬の通販サイト「オオツカ・プラスワン」
一般的なコンビニでは販売していないため、購入の際は薬局やドラッグストアに行きましょう。
夏場はオーエスワンの製造が追い付かず、入荷待ちになることもあります。
仕入れに制限がかかることもあります。
最近の夏の異常な暑さにより、団体様の大きな客注が入ると、すぐに欠品します。
いざ必要な時に慌てないためにも、いくつか常備しておくことをおすすめします。
経口補水液は自宅でも作れる
経口補水液が今すぐ欲しいという時は、自宅でも簡単に作れます。
水(できればミネラルウォーター) 500CC
砂糖 大さじ2(約20g)
塩 小さじ1/4(約1.5g)
これを混ぜるだけです、簡単。
この時、冷たい水ではなく少しあったかいお湯を使うと粉が溶けやすいです。
レモン汁があれば大さじ1/2ほど加えると少し飲みやすくなりますが、好みがありますのでいろいろ調節してみてください。
また、砂糖を黒糖にしたりしても味が変わります。
お好きな味を探してみてください。
保存料がない分、日持ちしません。
できれば作ってすぐに飲みましょう。
冷蔵庫で保管して、少なくともその日のうちに飲んだほうがよいと思います。
まとめ
いかがでしょうか。
飲む点滴と呼ばれる経口補水液は、用法用量を守って正しく使うことで効果を発揮します。
お薬ではないですが、しっかりと説明を読んでから飲みましょう。
一気飲みは危険です。
点滴ですから、ゆっくり時間をかけて、少しずつ身体に入れていってくださいね。
熱中症は誰にでも起こります。
事前準備や予備知識があれば、そんなに慌てなくて済むと思います。
少しでもだるさなどがでたら、無理せずにしっかりと水分補給をしてくださいね。